ドラえもん映画「のび太の日本誕生」の変遷に見る、時代の移り変わりとマーケティング戦略について

こんにちは、tikoです。

最近、新型肺炎の問題で家から出られないため、プロジェクターでおうち映画館を開館しています。

娘を通わせている幼稚園も、実質閉園状態となってしまったので、一家揃って天井のスクリーンで映画、という過ごし方がしばらく続きそうです。

これだけ毎日毎日、違った映画を観るという体験も久方ぶりですね。

サブスクリプション(月額課金サービス)は、ネット回線一つで無数の映像作品を好きなだけ、觀ることができますので、こうして家に引きこもって、クリックひとつで色々なコンテンツに触れることができます。

本当に、少し前からしたら考えられないほど、世の中は変わりました。

世の中は自粛ムードですが、オンラインでこんにち、わたしたちが享受している恩恵に感謝するとともに、少しでもこのオンラインを盛り上げるために、どんどん記事を書いていきたいと思います!

リメイク作品の今昔

さて、今回お話するのは、

ドラえもん映画の変遷に見る、時代の変化

について、です。

タイトルは「ドラえもん のび太の日本誕生」

初回放映は1989年。

そして、

「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」

こちらは2016年になります。

「新」の方は、旧作の完全リメイクとなるのですが、全く同じ作品を、27年の時を越えて再度作り直した、ということになります。

ドラえもん映画は、いつだって夢見る少年少女のために作られていますが、同時に親世代をターゲット層とした、ノスタルジアマーケティングで打ち出された作品でもあります。

懐かしいなと思う気持ちをフックに、映画館まで足を運んでみようという気になってもらう。

しかも、自分の子どもなど、あたらしい家族と思い出を共有できたりしますからね。

過去に一度楽しんだものであれば、当時の自分の気持ちを思い出すとともに、また新しく自分の視点に気付けたり、さらにはそのことを誰かと共有したり・・・

手軽に、多くの方面から一気に楽しむことができます。

時代と世代を超えて、何度も繰り返し楽しめるコンテンツというのは素晴らしいものです。

ほかに最近では、「ミュウツーの逆襲」などが記憶に新しいですが、こちらも1998年から2019年までの、21年もの時を経てのリメイクでしたね。

当時小学生だった子が、今、小学生の親になっている。

これって地味ですが、非常に夢があることだと思うんですよね。

しかし、その一方で・・・当時、最先端のマーケティングを行って、緻密に構成された作品というのは、その完成度が時代にマッチしていればいるほどに、

時が経つと、時代のギャップをありありと感じさせてしまうという難点があります。

代表的なところだと、サザエさんの2世帯住宅などは、昔は当たり前の光景でしたが、今やごく少数派になってしまっているため、

人によっては時代劇のように、世界観の隔たりを感じてしまうわけです。

そのため、ノスタルジアマーケティングを行う際は、新しく公開する時代の方に合わせて、もともとの魅力を損なわないよう、なるべく違和感を感じないようにチューニングをおこなう必要があります。

より正確に言うなら、旧作を一度觀たことがある人にとっても新鮮で、かつ、懐かしさも絶妙に共存させなければならない。

ちょっと横道にそれ過ぎてしまいましたが、この点、「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」は素晴らしい出来でしたね。

旧作は、純粋に古代日本への冒険がメインテーマでしたが、新作の方はそれを踏襲しつつ、もうひとつの大きなテーマを新たに共存させることに成功していました。

それは「家族愛」です。

もともとこの「日本誕生」では、のび太やスネ夫、しずかちゃん、ジャイアンが家出をする、というところが物語の導入部分で、冒険に出るきっかけになるのですが・・・

新作では、この家出の部分がより詳細に、尺をとって描かれています。

冒頭の、のび太が0点を取って怒られるという、ある意味「おなじみ」のシーンでも、お説教で足がしびれたり、裏紙の落書きを消されたりと、より「踏んだり蹴ったり感」が感じられるように変更されていますし、

その後、家出中に家に帰りたくなるシーンや、のび太の帰りを心配する両親のシーン、帰ってきたときにのび太のママがお説教するのを踏みとどまるシーン・・・などなどが追加されています。

このあたりは、明確に「親の目線」を意識してつくられているなと感じましたね。

ほかにも、旧作ではタイムパトロールに助けを求めて解決したところが、新作ではのび太やククルが自力で亜空間破壊装置を壊すようになっていて、物語としての完成度はかなり高まっています。

複数のテーマがあって、それぞれのシーンがそれらを表現する目的のもとに、きちんと緻密に作られていました。

逆に旧作は、ある意味で非常に「おおらか」です。

のび太達が「家出してやる!」といって出ていっても、お母さんは「あんまり遅くならないようにするのよー」なんて言ってたり。笑

物語のひとつひとつのシーンも、結構アドリブ的に進むことも多くて、觀ていてツッコミを入れたくなるような、そんな楽しさがあります。

やっぱり、新作はノスタルジアマーケティングを用いて、親世代の目線ももちろん盛り込まれて作られているのでしょうが、一番の違いとしては、

「見られているという意識」

であり、そこに時代の移り変わりを感じましたね。

細かいところだと、のび太くんの「えーっ、つまんないの、少女趣味なんだから」といったようなセリフも変更され、ジェンダー的な目線が入っていましたし、

のび太くんの部屋ひとつ取っても、昔とは違い6畳程度と、かなり現実的な変更がさり気なく加えられていました。

個人的には、水田わさびさんのドラえもんは、のぶ代ドラえもんに比べて、発言や言動がやや常識的になったような気がしています。笑

このあたりは、見比べてみると本当に細かいところで色々な変化があって面白いので、ぜひ試してみることをオススメします。

この作品じゃなくてもいいですし、もっと言えばドラえもんでなくとも、世の中の変化にうまく寄り添ってリメイクを成功させたものであれば、気づきも多く得られるはずです。

そういったものであるほど、違和感なく今の時代に合わせたチューニングをしているわけですし、そこに至るまでに数多くの一流のマーケティングや時代考証、観察眼があるわけですから、勉強にならないはずがありません。

単純にアニメーション映像技術の進化や、ストーリーや台詞回しなど、目に見えやすい部分の変化を眺めるだけでも楽しいですよ!

さらに上級テクニックとしては、過去の自分の目線と、現在の自分の目線を比較するという方法もあります。

まぁ、これは相当に思い入れがあって、何度も見た作品でないと難しいですが・・・

良質なコンテンツを浴びるように見て、自分の価値をどんどん高めていきましょうね!