映画『イエスマン“YES”は人生のパスワード』感想。パスを入力したその先は・・?

30/04/2019

NOと言えない日本人ーーー

われわれ現代に生きる迷い人たちは、社会への同調圧力をつねにその身に受けながら生活しています。上司であったり、親であったり、友人からですらも・・・

イエスマンという揶揄に込められているのは、侮蔑、哀れみ、それともーー自虐??

どうも、tikoです。

社会風刺的な、そんな響きを持つ映画「イエスマン“YES”は人生のパスワード」。今日はこの作品について、お話していきたいと思います。

実はずいぶん前から気になってはいて、レンタルDVD屋さんで見つけたそのタイトリングとジャケットには、大いに興味をそそられたものです。

主演は「マスク」でも主役を演じたコメディ俳優のジム・キャリー。

どうでしょうか、まさにキラー・ジャケット。反則的なタイトルにポージング、そして表情ではありませんか。

内容も、わかりやすく笑いながら観られるものとなっており、およそ二時間ずっと、テンポよく楽しめるものとなっていました。

それではレビューしていきたいと思います。

あらすじ

3行にまとめます。

人生にネガティブな銀行員のカールは、何もかもうまくいかない思いを抱えていた。妻との離婚、仕事での不調・・・あらゆる誘いにNOと言い続ける日々。ある日、友人があるセミナーへの参加をもちかけてくる。その誘いはうさんくさくて、でもその友人の人生はカールの目には眩しく輝いていて・・?

こんな筋書きです。主人公のカールは半信半疑ながらもこのセミナーに出ることで、自分の人生が変えられるかもと期待します。

その名も「YES!」セミナー。ロック・バンドのような熱狂をたたえるこの会場で、カールは教祖様の前で誓約を立てさせられます。

そしてそのとおりに劇的に人生が好転していくのですが、それが最高潮に達しようとした時に、まさにその誓約が起点となり足元が崩壊していく。

有り体に言えば『イエスだけでは人生うまく行きっこないよね』というものです。妻いわく「タイトルを見ただけで、なんとなく流れがわかった」とのこと。

たしかに、ひと目で内容をある程度推測できるのは、シンプルでありつつ姿勢も前のめりな、尖ったタイトルだと思います。

構成、テンポ

全編に渡ってコメディ色が強めの本作ですが、構成としては非常に緻密なものです。

「物語中で無意味な言動をさせない」という思想が貫かれており、一つ一つのシーン、一言一言が綿密に後になって効いてくる感じです。

なんにでも「イエス」というわけですから、カールの行動は自然にとっ散らかったものになります。でもそれが不思議とすべて、人生の好転というカタチで収束していく。

整然としたパズルを組み上げていくような楽しみがあり、ややご都合主義的でもありますが、そこはコメディ映画であるため違和感なく観られましたし、個人的にそういう論理的な映画はとても好きです。

『作品自体に計画性と愛着を持って、何度も練り上げているぞ』という感じがしますからね。

そしてコメディに大切なテンポやスピード感も心地よいと感じる程度で、非常に良い体感速度となっていました。

より大きな目線で見ると、日常と分岐点、人生の激変と高揚、試練と帰還、というような、いわゆる「神話の法則」であったり「スリーアクト」のテンプレートに沿って、忠実に作られていることも分かります。

こういった大きな流れに心を乗せて、これらの枠組の威力を再確認するのも良いですね。

ともあれ全般的に、構成としては緻密かつ王道をゆくものになります。

メッセージ性

情報発信をしている私達アウトロー(?)にとって、カールのような人生の起点にぶち当たることって、誰しもある話だと思うんです。

そのきっかけはカールのようにセミナーかも知れないし、友人かも知れないし、自分の中での気付きかも知れない。そういう意味で、私達がより共感できるところは多い映画でしょう。

しかし教義に沿って、無心でその教えを果たしていくことだけが人生ではありません。

たしかに作中で言われているように、「身体を慣らすための特効薬としての行動」が必要になってくる場面はあります。マインド矯正と業界では言われたりもしますが・・

うまくいく絶対法則やノウハウのようなものは存在しません。あるのは短期的・狭義的にとあるケースに適合する「法則らしきもの」だけで、そこに安住はできないということですね。

その「法則らしきもの」を見つけ出す思考、大もとの考え方・マインドを磨いていくことが重要だと、私はこの映画を観て再認識しました。

ただし、ことこの映画においては「YES」とまず言ってみることも大切だなと思いましたね。笑

NOということで閉じていってしまうものって、結構ありますからね。でもYESやNOという言動って表裏一体で、NOということは違う何かに対してYESと言っているわけですから、そういったことを自分で判断できるようにならないといけない。

ここまでつらつらとお話してきましたが、まあ、本作はそんなことを考えずとも、笑って観られるものであることは間違いないですので、興味を持っていただけたなら、観てみることをオススメします。

元気の出る、素晴らしい作品でした。