四万温泉旅行レポート。日常の喧騒を離れ、しばし、ノスタルジアに包まれる。

12/02/2019

こんにちは、tikoです。

このたび、群馬県の四万温泉(しまおんせん)に、家族で行ってまいりました。

温泉大国である群馬の温泉の中でも、有名な草津温泉と伊香保温泉・・の、ちょうど中間あたりにある割とマニアックな温泉で、その名の通り四万もの病に効き目があるという名を持つ場所です。

激烈な泉質、高めの湯温をもつ草津や伊香保と違い、四万温泉の泉質はマイルドで、小さな子どもや妊婦さんにもおすすめができるやさしい温泉なんですよね。

今回はいつもと少し趣向が変わって、旅レポのような形式となりますが、是非ひとときの旅行気分をシェアさせていただきたく、この記事を書くことにしました。

「奇跡の青」というキャッチコピーをもつ四万川ダム

都内から関越自動車道に乗ること約2時間、下道を約30分走ると、四万温泉に到着します。

車で来なければ、やすやすと辿り着けそうにない曲がりくねった山道・・それでも、馬車もなき古の時代より、はるばる四万の温泉を求めて人々が湯治にやってきたといいます。

温泉街は山あいにある小ぢんまりとした集落で、雪がちらついていたこともあり、まさに寒村と呼ぶにふさわしい趣。

到着したときは、「こんなところに村があるのか〜」という感じで、宿にたどり着く道も本当に狭くわかりにくかったために、それと分からずに行き過ぎてしまいました。

そのため予定をその場で変更して、あとで見に行こうとしていた「四万川ダム」を先に見物しに行くことに。

ここは四万温泉の名所の一つで、「息を呑む青さ」「奇跡の青」などといったキャッチコピーで紹介される、青い水をたたえたダムなのです。こういったシンプルで力強いコピーも魅力的ですよね。

すぐに到着したダムには雪が残っていて、駐車場には前の誰かが作ったらしい雪だるまが、私達を歓迎するようにお出迎えをしてくれました。

雪の積もった階段を30段ばかり登っていくと、ダムを見下ろせる高台に着きます。

写真だとちょっと伝わりきらないのですが、ダムの水が通常よりかなり青いんです。「四万ブルー」の愛称で呼ばれていて、肉眼で見るとその青さに驚かされます。

なんでも一説には、ダムの水に溶けだした「アロフェン」という鉱物が可視光線の青い波長を乱反射して、この色を作り出しているのだとか。

似たような光景に憶えがあって、ニュージーランドの「テカポ湖」も、ちょっと信じられないくらいの明るい水色をしているのですよね。こちらも現場を見た事があるのですが、日本人である私には四万川ダムの色の方が落ち着きます。

妻もこれには同感だったようで、自然の景観と国民性は、やっぱり深いレベルで関連していて、普段目にするもので性格や考え方もそりゃ変わってくるよね、なんて話をしました。

深みのある落ち着いた、しかし鮮やかなコバルトブルー・・・「うつくしい・・」などと、つい口をついて出そうになります。笑

これを見るためだけに行く価値も、十分あると感じましたね。

江戸より300年以上続く宿「積善館」

その後、来た道を戻り、迷いながらも宿に到着。

今回宿泊したのは、元禄4年(1691年)創業の「積善館(せきぜんかん)」。なんと300年以上も前に建てられた湯屋で、現存する日本最古の木造湯宿建築といわれています。

ジブリの宮崎駿さんも宿泊されたことがあり、「千と千尋の神隠し」のインスピレーション・モデルになったとも言われる旅館です。

公式サイトの方がよほどキレイに撮れていますが、私が実地で取った写真をば。

夜間などはライトアップもあり、よりムーディーでフォトジェニックな雰囲気となる!・・のですが、寒かったので日中の撮影です。橋の赤い欄干がアクセントとなり、とても幻想的な趣があります。

この右に映っているベージュ色の建物が、大正時代に建てられた、当時としては豪奢な作りの大衆浴場です。

 

もう少し視線を右にやると、川をわたる通路が見えます。

 

 

うーん・・・確かに千と千尋っぽいかも・・

建物に入ると受付も雰囲気バツグンで、本当に昔ながらの銭湯といった様子。天井が低くって、歩くと床がギシギシ鳴きます。

左に設置してあるのなんて、黒電話の電話ボックスですよ。

しかも小っさいダイアルが横についていて、一見どうやって使うのかすらわからない、本物のアンティークでした。

これ・・繋がってるのかな?それに、けっこう文化財的な価値が高いものが、そのへんに無造作に置いてあるんじゃないか!?こわい!!※建物まるごと重要文化財です

という感じで妻とドギマギしてしまいました・・

四万の病に四万温泉

なぜ4万という数字なのか?そしてその効くという病気の内訳はなんなのか?という野暮なツッコミは置いといて・・・四万温泉の泉質は本当にマイルドで、長く入っていられるライトな感じの温泉でした。

pHは7.7程度で、若干アルカリ性なのですが、皮膚がつるつるになるという感覚も本当にごく僅かで、刺激の少ない温泉でしたね。

下呂温泉などよりもだいぶマイルドに感じました。これなら皮膚の敏感な方、赤ちゃんやご年配の方に対しても、おすすめしやすいのではないかと思います。

積善館だけでもたくさんの温泉があって(なんと、混浴もありました)、写真つきでご紹介したいくらいなのですが・・・健全なブログ運営のために、ぜひご自身の目で目撃されて下さいということで。笑

それにしても積善館の内部は本当に入り組んでいて、もはやダンジョンでした。綺麗なラウンジあり、薄暗い廊下あり、行き止まりあり、鍾乳洞めいたトンネルあり・・・アトリエ、あり。

階が変わるごとに雰囲気もガラリと変わるし、遊び心とノスタルジーが奇妙に共存していて、独特な魅力を発していました。

お料理とサービング

温泉に浸かって温まったあとで、晩御飯に出てきた料理は、目にも楽しい日本料理のコースです。

 

サーブしてくれる方が個別につくのですが、鯛の兜煮を食べている時に、

「鯛の兜煮からは変わった形の骨が出てくることがあって、『鯛の鯛』といって、出てくるとその一年は幸せになれるのだそうです」

などの小話を添えて頂きました。

食事をより楽しむためのストーリーによる付加価値、サービスのクオリティについては学ぶものも多かったですね。

残念ながら鯛の鯛は見つかりませんでしたが、代わりに真蒸(しんじょ)という、家族みんなが満場一致でお気に入り認定した美味しい料理を発見しました。

 

「新しいご馳走の発見は、人類の幸福にとって星の発見以上のものだ」というわけですね。

コンパクトでノスタルジックな旅となりました

冬に行ったというのも一要因としてありそうでしたが、町全体から溢れ出る「おじいちゃん家」感と、ずっと雪も降っていたため、なんとなくノスタルジックな雰囲気ただよう温泉旅行でした。

温泉全体の規模は本当に小さく、車であれば10分程度で端から端までいけます。コンパクトにまとまっていて、私好みです。

ちなみに宮崎駿だけでなく、井伏鱒二や太宰治などの文豪も、この四万温泉を愛してやまなかったそうです。

この二人のお名前を一緒に聞くと、なんとなく陰のある印象を持ちます。そしてその雰囲気は、実際に体感した雰囲気そのもので、どこか切なく、どこかホッとするような、ノスタルジックな感覚です。

ノスタルジーはマーケッターとしては勢いや冴えを失ってしまいかねない感情なので、取扱が難しいのですが、万人を引きつける深みのあるストーリーを語るためには必要な要素で、熟知していかなくてはならない部分でもあります。

この二人はアンパンマンのやなせたかしさんもお好きだったようで、やなせ作品の光と闇の演出のバランス感覚にそれが見て取れます。このあたりはなかなか奥深く、自分の中で新しい課題も見えたような気がしますね。

夏場に行くと、川を体一つで下る「キャニオニング」やカヌー、バーベキューや天体観測など、違った雰囲気も楽しめるようなのでまた機会があったら夏に行ってみたいですね。

以上、四万温泉への旅行レポートでした。